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義務教育の「義務」とは何への義務か(後編)

移民にこそ義務教育を!

■自治体と文科省の言い分

 就学年齢の外国籍児童の数が、全国で最も多いのは横浜市。

 約4800人ですが、就学不明の子どもはその3割、約1400人にのぼり
ました。2位の大阪市でも、同じく3割の1307人。東京都江戸川区にいたっては、半数の1030人が不明となっています。逆に5位の静岡県浜松市は、該当する児童が2034人いるにもかかわらず、就学不明の子どもは2人。6位の埼玉県川口市でも、1680人の児童のうち、就学不明は6人です。

 ほぼ完璧に調べてある。

 なぜ、こんなに差が出るのか?

 答えはこちら。

 

 調査する気がなければ調査しなくてもいいから。

 就学状況を把握していない自治体の多くは、理由について「外国籍の場合、
日本人と違い子どもを小中学校に通わせる義務がないため確認していない」と
説明しています。

 たしかに義務教育をめぐる憲法の条文(第26条2項)は、「すべて国民は、法律の定めるところにより、その保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負ふ」というもの。

 外国人は「国民」ではないため、この義務を負っていません。

 自治体が就学状況をフォローしなくとも、べつに構わないのです。

 外国人児童の就学に関する文科省のスタンスも、

 〈行く義務はないが、国際人権規約に「教育を受ける権利」が定められてい
るので、本人が希望すれば来てもいい〉というもの。

 受け入れも自治体に任せているとのことでした。

 してみると、外国籍児童の就学状況をめぐり、文科省は調査データを持って
いないのでしょう。

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佐藤 健志

さとう けんじ

評論家・作家

 1966年、東京生まれ。東京大学教養学部卒業。

 1989年、戯曲『ブロークン・ジャパニーズ』で、文化庁舞台芸術創作奨励特別賞を当時の最年少で受賞。1990年、最初の単行本となる小説『チングー・韓国の友人』(新潮社)を刊行した。

 1992年の『ゴジラとヤマトとぼくらの民主主義』(文藝春秋)より、作劇術の観点から時代や社会を分析する独自の評論活動を展開。これは21世紀に入り、政治、経済、歴史、思想、文化などの多角的な切り口を融合した、戦後日本、さらには近代日本の本質をめぐる体系的探求へと成熟する。

 主著に『感染の令和』(KKベストセラーズ)、『平和主義は貧困への道』(同)、『右の売国、左の亡国 2020sファイナルカット』(経営科学出版)、『バラバラ殺人の文明論』(PHP研究所)、『夢見られた近代』(NTT出版)、『本格保守宣言』(新潮新書)、『僕たちは戦後史を知らない』(祥伝社)など。共著に『新自由主義と脱成長をもうやめる』(東洋経済新報社)、『対論「炎上」日本のメカニズム』(文春新書)、『国家のツジツマ』(VNC)、訳書に『[新訳]フランス革命の省察 「保守主義の父」かく語りき』(PHP研究所)、『コモン・センス 完全版』(同)がある。『[新訳]フランス革命の省察 「保守主義の父」かく語りき』は2020年、文庫版としてリニューアルされた(PHP文庫。解説=中野剛志氏)。

 2019年いらい、経営科学出版でオンライン講座を制作・配信。『痛快! 戦後ニッポンの正体』全3巻、『佐藤健志のニッポン崩壊の研究』全3巻、『佐藤健志の2025ニッポン終焉 新自由主義と主権喪失からの脱却』全3巻を経て、最新シリーズ『経世済民の作劇術』に至る。2021年〜2022年には、オンライン読書会『READ INTO GOLD〜黄金の知的体験』も同社により開催された。

 

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